かつて、まだレンズの技術が未熟な古の時代においては、 テレコンバータは、望遠が手元にない場合や、とにかく画質は二の次で焦点距離を稼ぎたい場合において、妥協策として用いられてきた。
だが21世紀もだいぶこなれてきた今現在、テレコンバータは結構使えるように進化してきているのだ。
といっても、実は進化したのはテレコンバータ自体ではなく、カメラと取り付けるレンズの方なのだが。
論より証拠で、下記の2点の画像を 見比べてもらいたい。被写体中心部を等倍で切り出して比較したものだが、一見、ほとんど違いは見られない。ではなぜ、レンズが余計に増えているのに、さほど画像が劣化しないだろうか。
知っているようで以外に馴染みのないテレコンバータ。写真にうるさい人ほど使いたがらないので、案外周りに持っている人も少ない。漠然と像を拡大する、という程度の認識の人も多いのではないだろうか。
もちろん、この認識は間違っていない。昔のものから現在のものに至るまで、メインのレンズの像を、レンズとボディの間に取り付けたテレコンバータで拡大しているのは間違いない。原理も変わっていない。ついでに言うと、光学的な仕組みもほぼ変わっていない。
要するに、こういう仕組みだ。
1.レンズの後玉からカメラに向かっていく像を拡大する
2.カメラに届いた像が拡大されているので、テレコンバータの倍率の分だけ拡大した像が得られる
実にシンプルである。
まず第一に、デジカメの機能によるものがある。テレコンバーターは、殆どの製品は1/2~2段分暗くなる。開放でf4のレンズでれあれば、f8相当の明るさになる、といった具合だ。そのため、ISO感度を変えることができるデジカメであれば、シャッタースピードを高速で維持したまま変えずに撮影できるし、最近のカメラは高感度のノイズにも強いので、露出に起因する画質の劣化やブレが少ないのだ。
次に、元になるレンズ自体の性能向上だ。何を隠そう、これが非常に大きい。
デジタルカメラ世代のレンズは、フィルム時代に比べて解像能力が大幅に向上している。テレコンバータは、わかりやすくイメージすると、レンズの後玉の映像を2倍に拡大して映像素子に照射しているため、後玉の時点での解像が悪いと、その分映像が劣化する。
だが、デジタルカメラ用のレンズは、数ミクロンの映像素子の幅に対応するために、フィルム時代に比べて大幅な改造能力の向上が行われているのだ。
もちろん、本稿で使用しているレンズも、古いとはいえデジタル対応の第1世代のレンズなので、それなりに解像感が良い。
そのため、デジタル対応のレンズでテレコンバータを使用すると、フィルム時代に比べると大幅に良好な映像が得られるのだ。
テレコンバータの説明書には、x2倍の場合、2段暗くなります、と書かれている。実は、この2段というのが絞りを見極めるヒントになる。ちなみに、1.4倍のテレコンバータの場合は、1/2段暗くなるはずだ。
テレコンバータが暗くなる理由は、後玉の中央部分の映像を拡大している = レンズの後玉の有効な口径が半分になっていることを示す。これは、ほぼ2段絞りを行っているのと同じ映像が得られるということだ。つまり、後玉の中心を2倍に引き伸ばすことで、得られる光が減り、2段絞られるということだ。
この場合、フルサイズデジカメであれば、開放がf5.4 – f6.7 程度のレンズであれば、テレコンバータをかませると解放でf8程度の絞りになるので、ある程度の良好な画質がえられるのだ。
もちろん、レンズが増えた分の画質の劣化は存在するが、天体写真等の無限遠固定で撮影を行う前提の場合や、大望遠での置きピンを行う野鳥撮影など、そもそもAFが当てにならない場合には、案外役に立つので、一つくらい持っていても良いかもしれない。
MFフォーカスでOKな場合は、テレコンバータは十分役に立つ。メーカー純正のテレコンバーターが手に入るなら、一つ持っていると便利。